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Federal Circuit Review | January 2014 (Japanese)

弁護士報酬の賠償を認めるには未必の故意による行為があったことの証明が必要とされたケース

Federal Circuitは、KILOPASS TECHNOLOGY, INC. v. SIDENSE CORP. (Appeal No.13-1193)において、弁護士報酬の賠償を求める申立てを却下した地裁判決を取り消し、事件を地裁に差し戻した。

Kilopassは、特許侵害を理由にSidenseを提訴していた。地裁は、Sidense側に侵害なしとする略式判決を与えた。Federal Circuitもこの判決を支持した。Sidenseは、本上訴が係属中に、特許法第285条に基づく弁護士報酬の賠償を求める申立てを地裁に提出したが、地裁はこの申立てを却下した。 Sidenseは地裁の申立て却下を不服として上訴した。

上訴における争点の一つは、主観的な不誠実性の立証について地裁が課した立証責任が過大であったか否かであった。地裁が依拠した判例は、「特許権者の主張には客観的根拠が一切なく、原告も実際にこのことを承知している」ことを要求した、MarcTec, LLC v. Johnson & Johnson, 664 F.3d 907, 916 (Fed. Cir. 2012) であった。Federal Circuitは、地裁が誤りを犯し、被告が285条分析の主観性要件を充足するには、未必の故意による行為があったことを証明しさえすればよいと判断した。同様に、Federal Circuitは、地裁が285条の主観性要件について分析した際に、主観的誠実性にしか注意を向けなかったことによって誤りを犯したと判断した。Federal Circuitは、客観的証拠が主観的誠実性に優越することは判例法により十分に確立されていると述べた。したがって、Federal Circuitは、全体的な事情にかんがみてKilopassが不誠実に行動したかどうかについて、Kilopassの請求の客観的実体および不誠実性に関するその他の客観的証拠に特に注意して検討させるため、地裁判決を取り消し、事件を差し戻した。


ITCには輸入後に発生する直接侵害行為誘引を理由に製品を排除する権限がないと判断されたケース

Federal Circuitは、SUPREMA, INC. v. U.S. INTERNATIONAL TRADE COMMISSION, (Appeal No. 12-1170) において、ITC(国際貿易委員会)の排除命令および関連する停止命令を一部取り消すとともに一部支持し、関連する上訴におけるITCのクレーム解釈と非侵害認定を支持した。

Cross Matchは、ITCに対し、Suprema3件の特許を直接的あるいは間接的に侵害する指紋スキャナーを輸入することによって関税法第1337(a)(1)(B)(i)に違反していたと主張していた。 上訴の争点は、(1) Suprema1件目の特許で特許されていた方法の輸入業者Mentalixによる直接侵害を誘引した、(2) Supremaが輸入したスキャナーの中に2件目の特許を直接侵害するものがあった、(3) 3件目の特許の侵害はなかった、とするITCの三つの判断であった。Federal Circuitは、第二および第三のITC判断を支持したが、第一の判断に基づくITCの排除命令の一部を取り消した。

Supremaは、上訴において、間接侵害の根拠となる直接侵害が輸入後に発生した場合に、申し立てられている侵害誘引について関税法1337(a)(1)(B)(i)違反であると断定する権限をITCが有することに異議を申し立てた。多数派はこの主張に同意し、同法条文の平明な文言は、輸入後にのみ発生する直接侵害の誘引行為を理由に製品を排除する権限をITCに与えてはいないと判断した。 この結論に到達するにあたり、多数派は、1337条の文面に加えて、侵害誘引に関するFederal Circuit自体の判例も吟味した。多数派は、動詞の現在形で「侵害する」物品の輸入を禁じている条文の文言に焦点を当てた。Federal Circuitの判例法によれば、特許法271(b)に基づく侵害の誘引は根拠となる直接侵害行為がなければ生じたことにならないため、多数派は、直接侵害がまだ起きていない状況では、本件の物品が271(b)に基づく侵害を現在犯していることにはならないと論じた。 したがって、Federal Circuitは、ITCが「輸入業者に侵害誘引の意図があったという申立てのみを根拠にして、後にCross Matchの方法特許の直接侵害の誘引となるかどうか定かでない物品の輸入を、誘引を理由に禁止することはできない」と判断した。

上記の判断に基づき、多数派は、輸入後に1件目の特許の侵害を誘引する製品に関する排除命令および関連する停止命令を取り消した。Federal Circuitの合議体は、2件目の特許を直接侵害する製品に関する排除命令は支持した。本件は、この判決に従って審理させるために差し戻された。

反対意見では、侵害誘引に対する関税法1337(a)(1)(B)(i)の適用を除いては、全ての点について多数派と同調するものであった。反対意見は、ITCは不公正な貿易行為を防ぐために設立され権限を与えられた機関であることから、輸入後に侵害を誘引する物品の輸入を防止する同委員会の権限を支持する姿勢であった。また、ITC設立の背景にあった連邦議会の明確な意図に多数派の判断がいかに逆行するものであり、1337条の立法目的の回避を容易にするおそれがあることを仔細にわたって論じた。


原料を0.1%使用することの開示があったため0.3%の使用は自明と判断されたケース

Federal Circuitは、GALDERMA LABORATORIES, LP v. TOLMAR, INC. (Appeal No. 13-1034) において、地裁の非自明性認定を覆した。

Tolmarは、アダパレンを0.3重量パーセント含有する、ニキビ治療薬「Differin Gel」の後発品の販売許可を求める医薬品簡略承認申請 (ANDA) を提出していた。Galdermaは、アダパレン組成物およびアダパレン含有外用剤組成物を使用したニキビ治療方法に関する特許4件を侵害しているとして、Tolmarをデラウェア州地区連邦地方裁判所に提訴していた。Tolmarは、特許法103条に基づき当該特許は自明であるため無効と主張し、主張の根拠として先行技術3例を提示した。地裁は、Tolmarの自明性に関する主張を退けた。

Federal Circuit合議体の多数派は地裁判断を覆す票を投じた。Federal Circuitは、先行技術を変更する動機の提供を証明する責任をTolmarに負わせた点において地裁が誤りを犯したと判断した。そして、Federal Circuitは、自明性に関する二次的考慮事項を分析し、問題の特許は自明であるために無効と結論した。Federal Circuitは、先行技術は0.1重量パーセントというアダパレンの濃度はアダパレンの標準的または最適な濃度であることを教示してはいるが、用量を3倍にすることを必ずしも阻害する要因とはなっていなかったと判断した。 さらに、アダパレンの増量については、先行技術で用いられていた用量の3倍に増量することから予想されるような副作用は伴わなかったにもかかわらず、Federal Circuitはこの事実に非自明性を証明する効果はないと判断した。また、Federal Circuitは、Galdermaの製品が商業的成功を収めているという証拠には、自明性評価において限られた証拠力しかないと判断した。さらに多数派は、後発医薬品会社がある医薬品の後発品の販売を目指しているという事実だけでは、非自明性を示唆する商業的成功の証拠にはならないと述べた。

一方、反対意見は、本件の自明性の問題は判断し難いものであったと論じた。反対意見によれば、多数派は地裁判断の明白な誤りを示すことができず、立証と証拠提出の責任を歪曲し、分析において「独自の事実認定と創作的な法理論」に依拠したとしている。反対意見では、本件の先行技術に関する独自の分析を提示し、二次的考慮事項に関する地裁の分析に明白な誤りがあったことは証明されていないと主張した。