過去に蔑称であったため現在の登録取消しへ:TTABが「REDSKINS」の商標を取消す
TTAB (商標審判部) は、商標の全部または一部が「REDSKINS」という名称で構成されており、プロフットボールチームに関係して使用される商標に関する6件の登録を取り消した。理由は、それらの商標が登録された当時 (1967年から1990年の間) にはアメリカ先住民にとって侮辱的であったと判断されたためである。
TTABは、フットボールサービスに関係して使用される場合には「REDSKINS」が「アメリカ先住民」の意味を保持していると判断した。1967年から1990年までの間に制作されたフットボールの試合のビデオ、新聞記事、報道機関向けガイドによって、被取消請求人が「フットボールサービスをアメリカ先住民のイメージと結び付ける継続的努力を行っていた」と証明されたからである。
TTABはまた、1967年より前および当該期間中に刊行された辞書の「redskin」の定義によって、「redskin」という名称を侮辱的と分類する「明らかな傾向」があったことが証明されると認定し、また、1986年までにはどの辞書もこの名称を侮辱的と分類するようになっていたと認定した。
次にTTABは、当該期間中にアメリカ先住民の約30%を代表していたNCAI (アメリカインディアン国民会議) のメンバーによる声明および決議を検討した。ある名称が侮辱的かどうかを検討するには、その名称が向けられている集団のうち過半数ではなく「相当数の構成員」が侮辱的と感じていることが要件となる。NCAIは1993年に、商標「REDSKINS」の登録に引き続き異議を唱えるという決議案を可決した。この決議案は1990年よりも後に可決されたものだが、TTABはこれが当該期間中にもたれていた意見に関する集団声明であったと判断した。さらに、NCAIは1967年から1990年までに行われた問題の商標のどの登録についても異議を申し立ててきた。取消請求人が堤出した証拠により、NCAIが当該期間中にアメリカ先住民の少なくとも30%を代表していたことが証明されたため、TTABはアメリカ先住民の相当数の構成員が問題の商標を侮辱的とみなしていたという点に同意した。
Amanda Blackhorse, Marcus Briggs-Cloud, Philip Grover, Jillian Pappan, and Courtney Tsotigh v. Pro-Football, Inc., Cancellation No. 92046185 (TTAB June 18, 2014) [先例となる].
不変の原則: 罵り言葉は依然として中傷的事項
TTABは、商標「ASSHOLE REPELLENT」は冗談ギフトに使用するのであっても中傷的であり低俗であると判断した。罵り言葉に対する現代の受け止め方を検討した後、TTABは審査官の商標登録拒絶査定を支持した。
出願人は、スプレー缶の商標として使用するために「ASSHOLE REPELLENT」の登録を出願していた。このスプレー缶は冗談ギフトとして販売されているものである。米国商標法は、「中傷的事項」で構成される商標の登録を禁じている。出願人は、問題の商標が中傷的でなく、最悪の場合でも失礼であるに過ぎないことを証明するための証拠を堤出した。しかし、TTABは、この証拠により、問題の商標が中傷的かつ低俗であるという審査官の判断が実際に裏付けられたと判断した。
TTABは、罵り言葉に対する一般市民の視点および現在の受け止め方を考慮した。しかし、TTABは、社会とメディアが罵り言葉の使用に寛容であるように見えても、そういった言葉の中には依然として低俗であるものもあると指摘した。
TTABは、「asshole」という言葉を出願人の忌避剤スプレー製品に使用することは、その言葉の低俗な意味を想起させると判断した。出願人が堤出した証拠は主流メディアにおける罵り言葉の使用の増加を証明したが、TTABは、「以前よりも頻繁に使用が許容されるようになったからといって、言葉がその冒涜的な意味を失うことはない」と述べた。ある学術研究とウェブサイト「Vocabulary.com」への投稿でも、一般市民が罵り言葉を不快と思っていることが裏付けられた。
In re Michalko, Serial No. 85584271 (TTAB May 30, 2014) [先例となる]
偉大なる商標: ロシア皇帝の姓は単なる姓にあらず
TTABは、先例のない審決意見において、PTO (特許商標庁) による「ROMANÓV」という商標の登録拒絶査定を覆した。
出願人は、卵形の装飾品、額縁、陶製の箱、宝飾品、置き時計に使用する商標「ROMANÓV」の登録を求めていた。審査官は、この商標が「主として姓に過ぎない」ことを理由に、登録を拒絶した。
商標法によれば、商標が「主として姓に過ぎない」場合、その商標が識別性を獲得していることを出願人が証明しない限り、これを登録することはできない。
TTABは、PTOの拒絶査定を審査するにあたり、この姓の珍しさ、この出願人の関係者にこの姓をもつものがいるか、この商標に姓以外の意味があるか、そしてこの商標が姓のように見え、あるいは聞こえるかを検討した。これらの要素を検討した後、TTABは、PTOが「ROMANÓV」が「主として姓に過ぎない」とは証明できなかったと判断した。
PTOは、人名録ウェブサイトでの検索により「Romanóv(ロマノフ)」について「100を超える結果」が得られたことに依拠していた。TTABはこれが、「100を超える」というのは姓の珍しさの度合を示す決定的尺度ではないため、この姓がありふれていることの証明としては不十分と判断した。この姓をもつ人が何千人もいる可能性もあれば、100人を少し上回る程度である可能性もあるからである。問題の姓がありふれたものであることを証明する責任が審査官側にあったため、TTABは疑わしい点については出願人に有利に解釈することにし、「Romanóv」が珍しい姓であると推定した。したがって、一般市民が「ROMANÓV」の商標を見たときにその姓としての意味を考える可能性は低いと考えた。また、TTABは、出願人の関係者にこの姓をもつものはいないことも考慮した。
出願人は、この姓は1613年から1917年までロシアを統治した皇家の姓であることから、この姓には見ればそれとわかる歴史的意味があると主張した。 しかしPTOは、「Romanóv」は辞書に意味が記載されておらず、ロマノフ家の一族にこの姓を有する人物 (ピョートル大帝、エカテリーナ大帝) が何人もいたことから、「Romanóv」に姓以外の意味はないと判断した。TTABは、出願人の商品 (卵型の装飾品や宝飾品) は、ロマノフ王朝と関係のある品であるため、この商標を見た消費者はこの姓をもつ個人ではなく王朝の方を思い浮かべる可能性が高いと判断した。したがって、出願人の商標「ROMANÓV」は「主として姓に過ぎない」ものではないと結論した。
In re The Hyman Companies Inc., Serial No. 85483695 (TTAB June 4, 2014) [先例とならない].
高機能サプリでも普通名称のレッテルを貼られたビタミンサプライヤー
Federal Circuitは、「CHILDREN’S DHA」はDHAを含有する栄養補助食品の商標として普通名称であると判断したTTABの審決を支持した。
Nordic Naturals社 (以下「Nordic」)は、脳の発育を促進するオメガ3脂肪酸の一種であるDHA (ドコサヘキサエン酸) を含む魚油を原材料とした栄養補助食品の専門会社である。Nordicは、DHAを含有している子供用栄養補助食品に関係する「CHILDREN’S DHA」の商標登録を出願していた。審査官は、この商標が普通名称であるか、識別性を獲得していないかのいずれかであるとして拒絶した。TTABは、DHAを含んでいる子供用栄養補助食品を購入する親や大人たちがこの名称を普通名称として使用していることが、辞書の定義および第三者の使用により証明されていると判断し、拒絶査定を支持した。Nordicは商業的成功を達成してはいるが、TTABは、「CHILDREN’S DHA」ではNordicが販売元であることを示していないと判断した。したがって、この商標は識別性を獲得していないことになる。
Federal Circuitは上訴審において、関連需要者が子供用のDHA含有製品を一般的に指すために「children’s DHA」を主として使用している、というTTABの判断は証拠により裏付けられていたと判断した。
Nordicは、「children’s DHA supplement」であれば記述的といえるかもしれないが、「CHILDREN’S DHA 」自体は記述的でないとも論じた。そして、自社の商業的成功は、消費者がNordicを「CHILDREN’S DHA 」の販売元と識別することができた結果であると主張した。Nordicは、小売業者からの宣言書、自社の広告例、Nordicの製品を指している「children’s DHA」の第三者使用例を堤出した。商標の「使用の混在」があるため、普通名称ではあり得ないと主張した。
しかし、Federal Circuitは、関連需要者の間で「children’s DHA」の使用の混在があったことは記録では証明されていなかったと判断した。また、第三者資料では、Nordicを販売元と示すためではなく製品を記述するためにこの名称が使用されていた。さらに、Federal Circuitは、宣言書は関連需要者ではなく小売業者のみから堤出されたものであったため、この名称を一般市民がNordicを指すために使用していることを証明していなかったと判断した。
Federal Circuitは、Nordicが「children’s DHA」の市場での初めての使用者である可能性は認めた。しかし、この名称は一般市民によって子供用DHA製品を指すのに使用されているため、Nordicがこの名称の独占使用を主張することはできないと結論した。
In re Nordic Naturals,Inc. ( Case No. 2013-1492, Serial No.77131419) (United States Courts of Appeals for the Federal Circuit, June 23, 2014).