TTAB、商品の出所を偽って表示する商標の登録を取り消す
ALEVEブランドのナプロキセンナトリウム鎮痛剤を米国で製造するBayer社は、メキシコで同じ商品をFLANAXという商標の下で販売している。Bayer社は米国でもFLANAXという商標を使うものの、米国での商標登録出願または商標登録は行なっていない。Bayer社がメキシコでFLANAXを販売し始めてから数年後、Belmora社は米国でFLANAX商品の販売を開始し、2005年に米国でFLANAXの商標登録を取得した。Bayer社は複数の理由に基づき、Belmora LLCによるFLANAXの米国商標登録の取り消しを求めてTTAB(商標審判部)に異議を申し立てた。その結果、Belmora社が商標法第14条(3)に違反して商品の出所について虚偽表示をしたことを理由に取り消しが認められた。
これに対してBelmora社は、Bayer社がFLANAXという商標を米国で使用していないため当事者適格を欠くとして争った。TTABは、Bayer社が自社のメキシコでのFLANAXの商標を保護する利益を持つことを説明することにより当事者適格のあることを証明したこと、またBelmora社が自社の商品がBayer社に関わりがあると示唆する形で商標を使っている場合、Bayer社はその評判を管理する能力を失い、損害を被ると判断した。
出所の虚偽表示を明らかにするため、Bayer社は「被申立人が申立人の善意と評判を利用して商標をあからさまに不正使用したこと」を立証しなければならなかった。TTABはその証拠がBelmora社の出所の虚偽表示を「容易に立証する」と判断した。
TTABは、Bayer社のFLANAXがメキシコで最もよく売れている鎮痛剤であり、Belmora社は自社が米国でその商標を採用したときにBayer社がメキシコでFLANAXという名称を使用していることに気づいていたとする十分な証拠を認定した。TTABはまた、Belmora社の所有者が宣誓証言を行なう前に証拠を捏造し、その証拠と商標の採用について虚偽の証言をしたと判断した。
さらにTTABは、Belmora社がBayer社のFLANAXロゴを下にあるようなパッケージングで模倣してメキシコで使用したことも認定した。
最後にTTABは、FLANAXを売り出す際にBelmora社は、次のテレマーケティング文句のような表現を使って[Bayer社の]FLANAXという商標への評判を喚起させた。「私はBelmora LLCの者です。当社はアメリカでFLANAXを製造しています。FLANAXはメキシコ、中央アメリカ[原文のまま]そして南アメリカでの売上が高いことから、ラテンアメリカ市場でとてもよく知られた商品です。」
Bayer Consumer Care AG v. Belmora LLC, Cancellation No. 92047741 (TTAB April 17, 2014) [先例拘束性をもつ]
現行の状態と現行の所有者を提出しなかったことを理由に異議申し立てが棄却される
Sterling JewelersはRomance & Co.が行なったWHAT YOUR HEART DESIRESという商標の登録に異議を申し立てた。Sterlingによる証拠の提出も証言の録取も行なわれることなくSterling社の証拠提出期間が終了した後、Romance社はSterling社の手続き遂行の懈怠を理由に、職権による異議の棄却を申し立てた。
Romance社は、Sterling社が自ら主張した商標登録を証明する正式な写しを証拠として提出しなかったと主張した。Sterling社は異議申立書に自社の商標登録を写真複写しか添付しなかった。しかしながら、連邦規則第2.122条(d)(1)は商標登録の現行の状態およびそれに対する現行の権原の両方について記録による情報を添付することを明確に要求している。そのため、TTABは提出された写真複写が十分なものではなかったと指摘し、Sterling社は証拠説明書または証言により自社の商標登録の現行の状態と権原を記録することができたにもかかわらず、それをしなかったと判断した。Sterling社はTTABに対して現行の状態と権原に関する証拠を提出する機会を認めるよう求めたが、Sterling社が証拠を提出せず証言も録取しなかったことがやむを得ない懈怠による結果であったことを証明しなかったとして、TTABはSterling社の要求を退けた。
Sterling社はまた、Romance社がその答弁書の中で、Sterling社が商標登録の「記録上の所有者」であることを認めたため、商標登録の所有者が誰であるかは問題にはならないと主張した。TTABは、Romance社の承認が商標登録の現行の所有者の地位を立証するとは解釈はしなかった。むしろTTABは、承認は単に異議申立人が異議申立書に添付された写真複写の持ち主であると特定されることを証明するに過ぎないと見た。
Sterling社が混同の可能性に関する自らの主張を支える証拠を提出せず、自ら主張する商標に対するコモンロー上の権利を証明せず、または自社が現在当該商標登録を所有すること、または商標登録が有効であることを証明しなかったことを理由に、TTABは異議申し立ての棄却を求める商標登録出願者の申立てを認めた。
Sterling Jewelers Inc. v. Romance & Co. Inc., Opposition No. 91207312 (TTAB March 27, 2014) [先例拘束性をもつ]
Swatch社、名称と時計の部品の図面からなる商標を登録できず
Swatch社は「宝飾品、ドレスウォッチおよびクロノグラフ時計」に関して次のような商標を登録しようとした。
商標登録出願において、Swatch社は商標が「tourbillon (トゥールビヨン)」のデザインの下に「TOURBILLON」という言葉を配置する形を取ると説明した。Swatch社はドレスウォッチおよびクロノグラフ時計についてTOURBILLONという言葉を使用する排他的権利を放棄したが、宝飾品については権利放棄をしなかった。審査官は、商標が全体として単に商品を説明するにすぎないことを理由に登録を拒絶した。
tourbillonはドレスウォッチまたはクロノグラフ時計の機能または構成部品である。そのため、TTABは当該の言葉はtourbillonを備える時計を説明するものとして極めて記述的であることを認めた。出願者はそれに対してTOURBILLONが宝飾品を記述するものではないと争った。審査官は、時計が宝飾品に属することから、当該の言葉は宝飾品についても同様に記述的であるとの見解を示した。TTABは、時計は容易に宝飾品の部類に属すると考えられることが十分な証拠により証明されたと認定し、審査官に同意した。
TTABは、「商品識別における重複は、商標登録証の証拠価値を制限したり、それに不利な影響を及ぼすことはない」と指摘し、この解釈が商品の識別において重複する側面を持つことを問題視しなかった。
TTABはまた、商標のデザイン的要素がtourbillonを表し、これもまた識別される商品の単なる記述にすぎないと判断した。デザインはSwatch社の商品の構成部品の正確な説明ではないが、それは商品の特徴がすぐに分かるようにするもので、その他の空想的、任意的または暗示的な側面を持ち合わせていない。
In re The Swatch Group Management Services AG, Case no. 85485359 (TTAB April 18, 2014) [先例拘束性をもつ]