TTABには色彩商標の範囲を限定する権限がある
Covidien社は、患者モニタリング装置と使用する医療用のコネクタやリード線に使用する商標として、ピンク色(パントンPMS 806)からなる商標を登録しようとした。PTOは、その商標が患者モニタリングセンサやケーブルに使用されるMasimo社の「赤色」の登録商標と混同される可能性が高いことを理由に、Covidien社の出願を拒絶した。
Covidien社は、Masimo社の商標を「[Masimo社]が市場で実際に使用している特定の赤色」に限定するように、Masimo社の登録の一部取消しまたは限定を求める請願を行った。Covidien社が請願の根拠としたのは商標法第18条であり、同条は衡平法上の救済手段として登録商標を限定する権限をTTAB(商標審判部)に与えている。
Masimo社は、Coviden社が救済が与えられ得るような請求を主張していないとして同社の請願の却下を申立てたが、TTABは、Covidien社は第18条の救済を請求するのに必要な申し立てを行っていたと判断した。特にTTABは、Covidien社の請願には、登録証に記載されている当該商標の記述がMasimo社が実際に使用している商標に固有のものではないことと、限定案によって混同の可能性があるという認定を回避し得ることが申し立てられていたため、同社の請願は十分であったと認定した。
しかしTTABは、Covidien社が提示したMasimo社の登録商標の修正案は、「使用されていると主張している色を商業用色見本システムを参照して説明しているだけであるため」、適用される要件を満たしていないと判断した。TTABはCovidien社に対し、同社が混同のおそれを生じさせないであろうと主張する修正案中に、もっと明確な記述を提示するように要求した。
Covidien LP v. Masimo Corp., Cancellation No. 92057336 (TTAB Feb. 2014) [先例となる]
Reynolds社の登録商標デザインは変更されたが商標は放棄されていないと判断
Reynolds社は、商標侵害を理由にHandi-Foil社を提訴していた。これに対しHandi-Foil社は、Reynolds社がHandi-Foil社に対して権利を主張している商標登録は放棄されているとして、それら登録の取消を図った。
Reynolds社は、1977年にアルミホイルのパッケージ・デザインについて2件の登録を取得した。同社は1997年にそれらの登録を修正し、パッケージに加えた変更を反映させた。
最初の登録 (図1)
1997年に修正された登録 (図2)
Reynolds社は2007年に、登録されているデザインにさらに変更を加えた使用見本を用いて当該登録を更新した。それらの変更には、青色とピンク色の部分を隔てる一連の銀色の曲線が含まれていた。
2007年の使用見本 (図3)
同社はその後、パッケージにさらに変更を加えた。変更には、箱の青色とピンク色の部分の広さの比率が変わった点と、それぞれの部分に印刷された文字の大きさの比率が変わった点が含まれていた。同社はまた、箱の青色の側に「Trusted Since 1947 (1947年からの信頼)」という文字も追加した。
現在のパッケージ (図4)
Handi-Foil社は、Reynolds社の現在のパッケージは当該登録商標と同一のものではないため、Reynolds社は2件の登録商標を放棄していると主張した。Reynolds社は、登録商標と比べた場合にパッケージが異なっていることは否定しなかった。同社は抗弁として、同社の包装は同じ継続的な商取引上の印象を与えることから、登録商標の「法的同等物」であると主張した。
裁判所はまず、現在のパッケージを「PTOに登録されている箱」と比較すべきであると判断した。PTOは2007年の(上記 図3)の使用見本に基づいて登録を更新したため、裁判所は2007年の見本が現在のパッケージとの適切な比較基準になると判断した。現在パッケージには変更が加えられているにもかかわらず、裁判所は、2つの包装は継続的な商取引上の印象を与えると認定した。このため、Reynolds社に略式判決が認められ、Handi-Foil社の登録商標放棄の主張は退けられた。
本件におけるReynolds社の抗弁は「tacking (使用期間の加算)」と呼ばれる法原理に基づいている。この原理は、商標権者が現在の形態の商標を継続的に使用していることを証明するために、先に使われていた全く同一ではない商標に依拠することを認めている。商標権者が商標の「tacking」に依拠するには、現在の商標が先の商標の「法的同等物」であることを立証しなくてはならない。ただし、複数の裁判所が「tacking」はまれにしか認められるべきではないという見解を明示している。
Reynolds Consumer Products Inc. v. Handi-Foil Corp., case number 1:13-cv-00214 (E.D. VA, Feb. 2014)