地裁判決:TTABによる腕時計用商標「INTELLIGENT QUARTZ」の登録拒絶は誤り
USPTOは、Timex社による腕時計用の商標「INTELLIGENT QUARTZ」の登録出願を、単に記述的として拒絶した。TTAB(商標審判部)への上訴審判でも、腕時計に使用する場合の「INTELLIGENT QUARTZ」は記述的商標に過ぎないという確認審決が出された。しかし、TTABには、Timex製の腕時計にはコンピューターチップで制御されるクォーツ(水晶振動子)が構成部品の一部として実際に使われているとの認識があり、この認識を審決の鍵としていたのだが、これは誤った認識であった。
Timex社は、連邦巡回控訴裁判所に上訴するのではなく、連邦地裁に新たな訴訟を提起した。同地裁は、TTABの審決は提出された証拠と矛盾していると判断した。特に地裁は、その証拠がTimex製の腕時計の水晶振動子はコンピューターチップで制御されていないことを明白に証明していると判断した。よって、地裁は、「『INTELLIGENT(自動制御ができる)』は、Timex社のINTELLIGENT QUARTZ腕時計の構成部品である『QUARTZ』(水晶振動子)を記述していない」という判断を示した。
地裁はまた、「想像性」基準あるいは「競争上の必要」基準に照らして「INTELLIGENT QUARTZ」が単に記述的であるかを判定するため、両当事者が新たに提出した証拠も検討した。その結果、地裁は、本件商標は商品の素材、品質、特徴に関する直接的な印象を伝えるものではないと結論した。被告であるTTABは、自らが主張する、技術的能力を有する腕時計はすべて「自動制御力のあるクォーツ」時計と記述的に呼ばれている、という主張を裏付ける証拠を提示することができなかった。よって、地裁は、消費者が本商標を本件の商品と結び付けるには、いくらかの想像力と推理力を働かせる必要があると結論した。さらに地裁は、提出された証拠により、「『INTELLIGENT』という言葉はクォーツの性状を記述しておらず、本商標が伝える記述的情報との関連性は非常に低い。よって、競合他社が自社の商品やサービスを説明するために同語の使用を必要とする可能性は低い」という結論が裏付けられていると判断した。よって、地裁はTimex社が申し立てた略式判決を認め、TTABの審決を覆した。
Timex Group USA, Inc. v. Focarino, Commissioner of Patents, case number 1:12-cv-01080, (E.D.VA, December 2013).
「LAKOTA」はアメリカ先住民ラコタ族と間違うとし、TTABが登録拒絶を支持
TTABは、先例拘束性をもつ判決意見において、ハーブを原料とするサプリメントおよび関連商品に使用される商標「LAKOTA」につき、「LAKOTA」という言葉はアメリカ先住民であるラコタ族との関係を偽って示唆しているとし、商標法第2条(a)に従って登録拒絶査定を支持した。
第2条(a)は、個人、団体、信仰、国民的象徴との関係を偽って示唆するおそれのある要素から成る商標、またはそれらの要素を含む商標の登録を禁じている。第2条(a)にいう偽りの関係を証明するには、審査官は、当該商標が (1)以前に別の特定の個人もしくは団体によって使用されていた名称またはアイデンティティと同じであるか、極めて近似していること、(2) 特定的に且つ紛れもなく当該個人または団体を指すものとして認識されること、(3) 当該商標で名称が使われている特定の個人または団体が、出願人がその商標を用いて行っている活動とは無関係であること、そして、(4) その特定の個人または団体の名声または評判が、その商標が出願人の商品やサービスとともに使用された場合に、当該個人または団体と当然関係があるものと思われること、の4点を示さなくてはならない。
審査官はまず、「LAKOTA」がアメリカ先住民の特定の部族の人々を指すことを立証する証拠を提出した。出願人は「LAKOTA」とは主に方言を指していると主張したが、TTABは、意味に二面性があるからといって、「LAKOTA」の語がラコタ族を示さないという証明とはならないと判断した。出願人はまた、「LAKOTA」は連邦政府に承認されたアメリカ先住民部族のリストには含まれていないため、同語が特定のアメリカ先住民を指していることにはならず、よって、第2条(a)にいう特定の個人または団体を指すこともないと主張したが、この主張も認められなかった。TTABは、「LAKOTA」をアメリカ先住民の特定の部族と認識している提出済みの証拠に触れた。
第二の条件に関しては、出願人は多数の第三者事業体が「LAKOTA」という言葉を使用していると主張した。このような事情を考慮すれば、消費者はそのような使用例をよく見かけて慣れており、「LAKOTA」が特定の個人や団体を特定的にかつ紛れもなく示すことはない、と論じた。TTABは、第三者が他の商品に「LAKOTA」を使用している証拠は、出願人の「LAKOTA」の使用がラコタ族を特定的に指していないと立証するには不十分とし、この主張は説得力に乏しいと判断した。また、TTABは、関連性の無い商品に登録されている第三者の商標登録は証明力がないと判断した。
第三の条件に関しては、出願人は、出願人のライセンシーがラコタ語の保存を推進する諸団体と提携していることから、ラコタ語を話すインディアン部族との関係があると主張した。TTABは、そのような慈善活動は、商業的関係の存在を示す証拠にはならないという判断を示した。
第四の条件に基づき、TTABは、ラコタ族は「その商業、観光事業および文化事業によって十分な知名度を得ており、南北ダコタ州の住民の間だけでなく、同地方を訪れる観光客の間でも周知されていると考えられる」と判断した。さらに、TTABは、ラコタ族の名声は癒し療法と薬草を使用した伝統療法にも及んでいると認定した。つまり、その癒しと薬草療法に関するラコタ族の名声により、商標「LAKOTA」が同様の商品に使用された場合、消費者はラコタ族との関係を連想することが立証されたとTTABは判断したのである。
最後に、TTABは、アメリカ先住民、つまりラコタ族を特定する意図が出願人にあったことを示す証拠を検討した。そのような意図があったことを示す証拠があれば、意図された偽りの関係の印象を公衆が抱くであろうことを証明するのに非常に説得力の高い証拠となるからである。出願人のライセンシーのウェブサイトには、アメリカ先住民に触れている箇所が多数あり、出願人の商品とラコタ族の人々との間につながりがあるかのような印象を与えている。
In re Kent Pedersen, Serial No. 85328868 (TTAB, Dec. 2013) [先例となる]
商品の販売広告だけでは商業における使用とはならないとTTABが確認
TTABは、先例拘束性をもつ判決意見において、商品を広告するだけでは商標法にいう商業における使用とはならないことを確認した。Clorox(クロロックス)社は、「電子装置、すなわち各種イオン溶液の製造に使用する電解槽に使用される」とされていた商標「CLOROTEK」の登録に異議を申し立てていた。クロロックス社は、略式判決を求める申立てを提出し、出願人が使用に基づく出願をした時点で当該商標の誠実な使用が一切なかったという主張に焦点を当てた。
出願人は、出願日より前に米国内で販売していた商品には当該商標を使用していなかったことを認めた。出願人はその代わり、出願日の時点で、出願人の英語版ウェブサイト上で当該商品を広告し販売の申出を既に行っていたと主張した。出願人はさらに、出願人の商品のような商品に対して実際の販売または輸送があったことを要求するのは不公正であり、「商業における使用」の要件化の背後にあった連邦議会の意図に反すると主張した。特に、出願人は、製品1点の価格が20万ドルから200万ドル以上にも及び、あるいは特定の顧客の仕様に合わせて特注で製造され重量約1トンにも達する装置の輸送を要し、1年間の製品販売数が平均して1点にも満たない本件のような例にまで商業における使用の要件を適用させることは、連邦議会の意図ではなかったと主張した。
しかし、TTABは出願人の主張は実体を欠くと判断し、「本件のように、商業における商品の実際の販売または輸送が伴わない場合、米国内で単に広告や販促に商標を使用しただけでは、商標法にいう商業における商標の使用と認めるには不十分である」とした。出願人が使用に基づく出願をした当時に本件商標の商業における誠実な使用をがなかったことから、TTABは略式判決を求めるクロロックス社の申立てを認め、出願人の商標登録を拒絶した。
The Clorox Company v. Hermilo Tamez Salazar, 108 USPQ2d 1063 (TTAB 2013) [先例となる]