出願人 商標放棄の主張判決に同意をして詐欺の主張の判決を回避
商標登録取消し審判において、原告は出願人が商標を放棄したと訴えていたが、出願人はその原告の主張に同意し、判決として登録するようTTAB(商標審判部)に申し立てた。TTABは先例拘束性をもつ判決理由の中で、同出願人の申立てを許可した。また、TTABは原告の詐欺の訴えの裁定は拒否し、その理由として、詐欺の訴訟に対する唯一の救済は登録の取消しであるため、本件の場合、商標放棄の訴訟の判決登録が既に認められていることを挙げた。
一般的にTTABは、連邦裁判所と同様に、判決の登録および事件を処理するために必要な訴えのみを裁定している。具体的には、TTABは登録可能性の有無を判断する際、申し立てられたすべての訴えを審決する必要はない。
本件では、Multisorb Technologies社.が、商標放棄および詐欺を理由に、Pactiv Corporationの商標「ACTIVETECH」の登録取消しを求める請願を行っていた。これに対し、被告Pactiv社は商標放棄についての判決にのみ同意する申立てを提出した。そして、同社の商標放棄を理由とする判決への同意は商標登録取消しに十分であり、問題は解決となり、本審判は原告Multisorb社の詐欺の訴えの裁定を行わずに終了するべきと主張した。これに対しMultisorb社は、Pactiv社の申立てを認めれば、商標使用詐欺の訴えの判決から生じる再訴遮断効の恩恵をMultisorb社が受けられなくなると主張した。
TTABは、商標使用の詐欺について判決を出すことは次の二つの理由から不要と判断した。第一には、商標放棄についての判決が登録されることによって、当該商標の登録が取り消されることである。第二には、商標使用詐欺の訴訟について判決を出しても、Pactiv社が同じ商標の新規出願を行うことを禁じることにはならず、また、Pactiv社の新規出願に対しMultisorb社が異議申立てを行うことを請求排除の効力に基づいて禁じるものともならないことである。
Multisorb Technologies, Inc. v. Pactiv Corporation, Cancellation No. 92054730 (December 30, 2013) [先例となる]
美容サロンの商標「SHAPES」に対する異議申立てにおいて「SHAPE」誌が勝訴
TTABは、先例拘束性をもつ審決意見において、混同のおそれを理由に美容サロンに使用される商標「SHAPES」の登録阻止を求めていた「SHAPE」誌の異議申立てを認めた。
出願人であるD & D Beauty Care Companyは、様々な美容サロンサービスやスパサービスに使用する商標「SHAPES」の登録を出願していた。異議申立人であるWeider Publicationsは、混同のおそれと不鮮明化による希釈化のおそれがあることを理由に、「SHAPES」の登録に対し異議を申し立てた。異議申立人は、「身体のフィットネスおよび運動に関連する雑誌」と「健康およびフィットネス分野のオンライン雑誌を提供するコンピューターサービス」に使用する登録商標「SHAPE」を所有している。
「SHAPE」誌は、女性のアクティブなライフスタイルをテーマとする雑誌の中で第1位に挙げられており、また、若い女性一般を対象とした有名雑誌の中でも第4位に挙げられている。印刷版および電子版の両方で発行されている「SHAPE」誌には月間約600万人の読者がおり、その大部分は女性である。異議申立人は、各種美容サービスが提供されるライブの美容イベントに「SHAPE」の商標を掲げ、定期的にスポンサーをしている。
出願人は、美容、美容術、眉の糸脱毛を行うサロンを運営しており、登録商標「SHAPES BROW BAR」のもと、これらのサービスを提供している。出願人は、商標を使用する意図に基づき「SHAPES」の登録を出願した。
TTABは、混同のおそれの分析上では、「SHAPE」は「混同のおそれの分析において最も重要な判断材料となる」著名商標であると判断した。TTABは、混同のおそれを検討する際に検討要素とする著名性は、「関係消費者の大部分が (中略) その商標を出所表示として認識している」のであれば生じるものであり、「その商標のもと販売されている商品の売上高および広告費の金額からは間接的に測定」することが可能であると述べた。TTABは、異議申立人の発行部数と購読者数を検討し、両者が多大な数に上ることに「ウェブサイトの訪問者数が多大であることを加味すれば、印刷版、オンライン版、アプリケーション版における本誌の著名性を証明する説得力ある証拠となる」と判断した。またTTABは、広告主らにとっては「SHAPE」誌への広告掲載はプレミアが付くことも結論した。
TTABは、「同じ語の単数形と複数形で構成されている商標やサービスマークは実質的に同じ商標であるといえる」と指摘し、両商標の類似性が高いと結論した。
TTABはまた、混同のおそれが認められる状況について、「被告の商品やサービスが原告の雑誌に通常掲載されているような種類のものであったり、被告の商品やサービスと雑誌で取り上げられている商品やサービスとを関連づけるような広告がある場合」と結論した。本件の場合には、異議申立人の雑誌の記事の約35%と広告の30%が美容とファッションに関連するものであった。異議申立人の雑誌には、健康と美容のためのスパや商品の評価も掲載されていた。TTABは、異議申立人は「『SHAPE』誌に頻繁に掲載される記事の種類と出願人が出願書の中で指定したサービスの密接な関係」を示したと判断した。
両当事者の商品やサービスは、それぞれに異なった取引経路を通じて流通しているが、TTABは、両当事者とも同じ消費者、つまり実質的に同じであるか重なり合う年齢相の女性をターゲットとしていると判断した。
さらに、TTABは、「SHAPES」という語には健康とフィットネスの分野においていくらかの示唆的な意味があると認めたが、異議申立人の商標「SHAPE」は非常に高い著名性を獲得しており、その出所は同申立人のみであるこをと示す識別力を得ていることを認めた。
すべてを考量した結果、TTABは混同のおそれがあると判断し、異議申立てを支持した。混同のおそれが認定されたため、異議申立人の希釈化に関する請求は検討されなかった。
Weider Publications, LLC v. D & D Beauty Care Company, LLC, 109 USPQ2d 1347 (TTAB 2014). January 27, 2014. [先例となる]