普通名称であり無制限に使用できると判断された「CloudTV」
ActiveVideo Networks社は、ケーブルテレビや衛星テレビのプロバイダーが加入者に提供するインタラクティブなテレビコンテンツベースのサービスに使用するために「CloudTV」という商標の登録を出願していた。
審査を担当したPTO (特許商標庁) の審査官は、この名称が普通名称であり、あるいは記述的に過ぎず識別性を獲得していないことを理由に、登録を拒否した。TTAB (商標審判部) は不服審判において審査官の拒絶査定を支持した。出願人は、「cloud」は自己の商品やサービスと合わせて考えれば多義にとれる名称であるとの証明を試みたが、TTABはこれを受入れなかった。むしろ、証拠は出願人が自己の商品やサービスを説明するのに「cloud」という名称を再三使用していたことを示していた。
出願人はまた、PTOはこれまでにコンピューターソフトウエアや関連サービスに使用される数々の類似した商標の登録を許可してきたと主張した。TTABはこれに対し、オンラインビデオストリーミング、インタラクティブテレビ、ビデオ・オン・デマンドに関連する技術革新が急速に進んだため、消費者も「cloud」のような名称を素早く取り入れるようになっていると反論した。また、かつて識別性を有していた名称が普通名称化することもあると指摘した。TTABは、「CloudTV」をインターネットに接続されたスクリーンを所有している消費に向けたビデオ・オン・デマンド・サービスによるテレビ配信に使用される普通名称であると関連需要者が認識していることを示した明確で説得力のある証拠により、PTOは証明責任を果たしたと認定した。
「CloudTV」は出願人が考案した名称であるため普通名称にはなり得ないという出願人の主張にかかわらず、TTABは、「CloudTV」が出願人の商品やサービスの「中心」または「主要な面」を指しているため、普通名称であると判断した。TTABはまた、この商標が記述的に過ぎず識別性を獲得していない、というもう片方の拒絶理由も支持した。
In re ActiveVideo Netoworks, Inc., Serial No. 77967395 (TTAB July 9, 2014) [先例となる].
TTABが発音分析を誤ったにもかかわらず「STONSHIELD 」は「ARMORSTONE 」と類似していないという判断が維持されたケース
StonCor Group社は、自社の登録商標である「STONSHIELD 」との混同のおそれがあると主張し、「ARMORSTONE 」という商標の登録に異議を申し立てていた。TTABは、混同のおそれを認めず、異議申立てを却下した。StonCor社はこれを不服としてFederal Circuitに上訴した。Federal Circuitは、TTABが分析の一部で誤りを犯したが、拒絶査定は実質的な証拠を根拠としており法にかなっていたため、その誤りは無害なものであったと判断し、TTABの審決を支持した。
TTABは、「STON 」という綴りは、「o」が「on」という語のように短母音として発音されることを示していると判断した。この発音に基づき、TTABは「STONSHIELD 」と「ARMORSTONE 」の発音には相違点があると判断した。TTABは、想定される消費者は「STON 」を「stone」と発音する可能性が高いことを示唆するStonCor社が堤出した証拠をほとんど鑑みなかった。Federal Circuitは、TTABの発音分析は実質的証拠を欠いていたと判断した。一般に受け入れられている語でない商標に、正しい発音というものは存在しない。Federal Circuitは、商標が一般に受け入れられている語でなく、証拠の重みによって特定の発音に関する判断が裏付けられる場合に、TTABがその証拠を全く無視し、独自に判断した発音を押し付けたことは誤りであったと判断した。
Stoncor Group, Inc. v. Specialty Coatings, Inc. 2013-1448, Opposition No. 91187787 (July 16, 2014, United States Court of Appeals for the Federal Circuit).
家名を巡る家族の争い
Harry Winston Inc.は、Harry Winstonの息子の名である「BRUCE WINSTON」の登録に対する異議申立てにおいて勝訴した。
Harry Winstonは、高級ジュエリー界では最もよく知られた名前の一つである。Harry Winston, Inc.は過去80年以上にわたって「WINSTON」と「HARRY WINSTON」という商標をジュエリー関連の用途に使用してきており、これらの商標を組み入れた複数の登録商標を保有している。Harry Winstonの息子であるBruce Winstonは、2002年 (1978年にHarry Winstonが死去してからずっと後) に設立されたBruce Winston Gem Corp.という会社の会長である。 両社とも、特に大粒の宝石および多数の宝石、またはそのいずれかを使用した高級ジュエリーを販売している。両社のジュエリーは、数千ドル、数十万ドル、そして時には数百万ドルで販売されている。
TTABは、混同のおそれを分析する目的上、「WINSTON」と「HARRY WINSTON」という商標がジュエリー業界では有名であると認定した。TTABは、ジュエリーに関する「HARRY WINSTON」ブランドの著名性を示す数々の例を挙げた。たとえば、1953年の映画『紳士は金髪がお好き』でマリリン・モンローが歌う「ダイヤモンドは女の親友」という曲の歌詞には「Talk to me, Harry Winston, tell me all about it. (ハリー・ウィンストン、私にダイヤモンドのすべてを教えて) 」という一節が含まれている。Harry Winston自身も、スミソニアン学術協会に名高いホープダイヤモンドを寄贈したことで知られ、業界で非常に有名な存在だった。国立スミソニアン自然史博物館の展示室の一つは、「The Harry Winston Gallery」と名付けられている。Harry Winstonは、1940年代からアカデミー賞授賞式などの栄えあるイベントに出席するスター達に自社のジュエリーを貸与し始め、以後数十年にわたってその慣行を続けており、大きな宣伝効果を得た。また、故ダイアナ妃も「HARRY WINSTON」のジュエリーを着用した姿が撮影されている。
さらにTTABは、これらの証拠が「報道関係者やその他の第三者の間に、出願人の創業者と異議申立人の創業者との関連性とこの2社の間のつながりを自発的に認識し強調する強い傾向」があることを示していると判断した。Bruce Winstonも、自身にとってBruce Winstonであることは有名なジュエリー商人の息子であることを意味していると認めている。この要素もまた、混同のおそれありという判断の強い根拠となった。
Harry Winston Inc. et al., v. Bruce Winston Gem Corp., Opposition No. 91153147 (TTAB July 9, 2014) [先例となる].