支持された不公正行為判決
Federal Circuitは、AMERICAN CALCAR, INC. v. AMERICAN HONDA MOTOR CO. (Appeal No. 2013-1061) において、Calcar社が不公正行為を犯したという認定を支持した。
Calcar社は、自動車用のマルチメディアシステムに関係する特許を主張していた。Honda社は、特許権者がその特許を出願権利化する過程で先行技術であるHonda製自動車のオーナーズマニュアルと写真の開示を差し控えたことから、不公正行為を理由とする特許無効の認定を求める申立てを行った。地裁は、この情報の不開示がなければ、PTOは当該の特許を付与しなかったであろうと論断し、申立ての趣旨に同意した。さらに地裁は、特許権者がこの情報が重要なものであることを知っており、その上で開示しないという故意の決定をしたため、PTOを欺く意図があったと判断した。Calcar社はこれを不服として上訴した。
Federal Circuitは地裁判決を支持した。重要性に関しては、Federal Circuitは、Calcar社が開示を差し控えた先行技術と権利主張している特許のクレームとの間の発明上の違いを地裁が考慮に入れなかった、というCalcar社の主張を退けた。しかし地裁は、唯一の違いは「システムに格納されている情報の性質」であり、また、当業者にとっては先行技術のシステムに格納されている異なる情報も含むことが自明だったであろうと判断し、この問題については答えを出していた。したがって、地裁はその重要性認定において明確な過誤は犯さなかったことになる。Federal Circuitは、同様に地裁が意図要件に関しても明確な過誤は犯さなかったと判断した。Federal Circuitは、特許権者が先行技術に関する重要な情報の一部だけを開示したことは、「その開示が故意に選択的になされたものであった場合、特許権者にそのような意図があったことを許してよいことにはならない」と判断した。特許権者には「包括的な開示を行うための十分な時間と機会があった」のだから、過失推定を裏付ける証拠はないというわけである。
Newman判事は、反対意見において、係争特許のうち1件の再審査中に、開示が差し控えられた情報は特許の適格性を判断する上で重要なものではなかったとPTOが認定しているため、重要性要件は充足されないと主張した。Newman判事はまた、意図要件が充足されたか否かについても疑義を唱え、特許権者のPTOに対するステートメントや行為からは別の推定を導き出すことができると主張し、さらに、不公正行為はなかったという陪審の助言的評決もあったことを強調した。
3億6800万ドルの損害賠償判決が無効に
Federal Circuitは、VIRNETX, INC. v. CISCO SYSTEMS, INC. (Appeal No. 2013-1489) において、ロイヤリティの算定に用いられた基盤が不適切であったとして、損害賠償判決を無効とした。
VirnetX社は、セキュアなインターネット接続とVPN構築技術に関する特許を侵害しているとしてApple社を提訴していた。VirnetX社は、「FaceTime」と「VPN On Demand」の機能で同社の特許技術を使用していることを理由に3億6800万ドルの損害賠償をApple社に命じる陪審裁判評決を勝ち取った。
Federal Circuitは上訴審において、ロイヤリティの算定基盤が不適切であったと判断し、損害賠償判決を無効とし地裁に差し戻した。Federal Circuitは、地裁の陪審に対する説示では、販売可能な最小単位がロイヤリティ算定基盤に用いられた場合には算定基盤の選択についてそれ以上の制約はない、という誤った示唆がされていたため、合理的なロイヤリティに関する法律を誤って伝えていたと判断した。販売可能な最小単位が、いくつかの非侵害機能を含んでおり複数の構成要素から成る製品 (例えばApple社のiPhone) である場合、特許権者はその製品の価値のうちどれだけの部分が特許技術に帰属するのか推定するため、さらに細かい作業を行わなくてはならない。Federal Circuitは、五分五分の分割を示唆した数学理論 (ナッシュ交渉解) に基づく損害賠償算定理論は、この事件に適用するには不適切な「大雑把な目安」であったと指摘した。
特許不適格と判断されたオンライン取引クレーム
Federal Circuitは、BUYSAFE, INC. v. GOOGLE, INC. (Appeal No. 2013-1575) において、特許法101条に基づき特許適格な主題を欠いているために特許無効とする判決を支持した
buySAFE社は、特許侵害を理由にGoogle社を提訴していた。主張されていたクレームは、オンライン取引において取引当事者の履行を保証するための方法と機械可読媒体であった。Google社は、主張されていたクレームは特許法101条に基づき無効であると主張し、訴答に基づく判決を求める申立てを行った。地裁は、Google社の申立てを認め、問題の特許は周知かつ広く理解されている概念を記述したものであり、その概念を従来のコンピューター技術とインターネットを用いて応用したに過ぎない、と結論した。
Federal Circuitは、Mayo Collaborative Services v. Prometheus Laboratories, Inc., 132 S. Ct. 1289 (2012) および Alice Corp. v. CLS Bank International, 134 S. Ct. 2347 (2014) で最高裁が確立した2段階のフレームワークに基づき、地裁判決を支持した。Federal Circuitは、まず、問題のクレームが抽象概念を対象とするものかどうかについて判断した。Federal Circuitは、問題のクレームは「まさに」契約関係を締結する抽象概念に関するものであり、とりわけ「取引履行保証」がそうであると述べた。次にFederal Circuitは、抽象概念自体を「遥かに超えた」ものにクレームの性質を変化させるのに十分な追加要素が問題のクレームに記述されているかどうかを確認した。Federal Circuitは、クレームに記述されているコンピューターの機能は一般的なものであり、「たぶん発明性があるとさえいえない」ため、そうではないと結論した。さらに、保証される取引自体がオンライン取引である場合には十分とはなり得ないと述べた。Federal Circuitは、当該の表現は、抽象的な保証の概念の使用を特定の技術的環境に限定しているだけなので、クレームを特許不適格の判断から救うには不十分と指摘した。