地裁が好ましい実施態様に合わせてクレームを不適切に限定したと判断された事例
Federal Circuitは、GE LIGHTING SOLUTIONS, LLC v. AGILIGHT, INC. (Appeal No. 13-1267) において、クレーム解釈に基づき非侵害とする略式判決の一部を覆し、一部を支持した。
GEはLED関連の特許を侵害を理由にAgiLightを提訴していた。当該のクレームには、「IDCコネクタ」、「実質的に楕円体様の内形と概して球形の外形を有する光学素子」、そして「環状のガスケット」という用語が含まれていた。クレーム解釈後、両当事者は、地裁のクレーム解釈に基づき一部の特許を非侵害とすることで合意し、地裁はその他の特許を非侵害とする略式判決を求める申立てを認めた。GEはこれを不服として上訴した。
Federal Circuitは、好ましい実施態様と従属クレームから不適切に構造的限定を持ち込んだとして、地裁の「IDCコネクタ」の解釈を覆した。IDCコネクタという用語が平易な意味で一般的に使用されている用語であることに議論の余地はなかった。明細書で開示されていた実施態様は1例のみであったが、好ましい実施態様から限定をクレームに持ち込んで解釈することは、辞書の定義とは異なる意味での言葉の使用や否認などにより特許権者がクレームをそのように限定する意図であったことを明確に示すものが内的証拠中にない限り不適切である。本件にそのような状況は存在しなかったため、Federal Circuitは地裁の判断を覆した。
また、Federal Circuitは、「実質的に楕円体様の内形」と「概して球形の外形」という用語の解釈が当事者間で異なっていたために侵害に関する事実についての真正な紛議が存在したかどうかという点に関する地裁判断も覆した。両当事者は、問題の用語の定義についても合意した。しかし、内形全体が実質的に楕円体様でなければならないのか、それとも内形の一部が実質的に楕円体様であればクレームの条件を満たすことができるのかという点について紛議が生じた。Federal Circuitは、前者が明細書で開示されている唯一の実施態様を除外することになるため、後者の解釈を採用した。同様の理由により、Federal Circuitは地裁の「概して球形の外形」という用語の解釈も覆した。
法廷に対する詐欺を理由に制裁が科された事例
Federal Circuitは、MONSANTO CO. v. E.I. DU PONT DE NEMOURS & CO. (Appeal No. 13-1349) において、地裁による制裁の賦課を支持した。
Monsantoは、除草剤耐性を有する大豆を生産販売するためのライセンスをDuPontに付与した。ライセンスには、DuPontがこの耐性と別の耐性を併せもつスタック品種を開発する権利を制限する文言が含まれていた。DuPontがこの耐性に加えて別の耐性も有するスタック大豆を開発したとき、MonsantoはDuPontを提訴した。訴訟の過程で、DuPontは自社がライセンス対象の耐性と別の耐性を併せもつ品種を開発する権利を有していたことを常に主観的に信じてきたと述べ、契約訂正を求める反訴を追行した。地裁は、ディスカバリーで堤出された証拠に基づき、DuPontの主張は「事実に根ざす」ものではないと認定した。地裁は、DuPontが法廷に対する詐欺を犯し、司法手続を濫用したと判断した。地裁はこれに対し、DuPontの契約訂正を求める抗弁と反訴を退け、DuPontの反訴に対する弁護に要した弁護士報酬に限定した弁護士報酬をMonsantoに補償するようDuPontに命じた。
Federal Circuitは、この制裁の賦課が第8巡回区法に基づき裁量権の濫用にあたるかどうかを審査した。Federal Circuitは、DuPontの行為は「法廷に対する詐欺」を構成するだけの高度な基準を満たしていないと判断したが、DuPontが司法手続を濫用し積極的な事実の不実表示をすることによって不誠実に行動したと地裁が判断したことは正しかったと判断した。したがって、Federal Circuitは地裁が科した限定的な制裁を支持した。
インターネット上のニュースグループへの投稿は刊行物に相当する
Federal Circuitは、SUFFOLK TECHNOLOGIES, LLC v. AOL INC. (Appeal No. 13-1392) において、インターネット上のUsenetニュースグループへの投稿という形態の「刊行物」を根拠に新規性が欠如していると判断した地裁の略式判決を支持した。
Federal Circuitは、1995年のUsenetニュースグループへの投稿は、当業者を読者として想定したものであり、かつ十分に公開されていたため、刊行物に相当すると判断した。さらに、表面的な変更の証拠にもかかわらず、投稿の真正性は著者の証言により十分に証明された。また、Suffolk側の専門家証人が問題の独立クレームの有効性については何の意見ももたないと以前に証言していたため、その専門家証人による同クレームの有効性に関するクレーム解釈後の証言を除外することによって地裁がその裁量権を濫用したことにはならないと判断された。