特許付与後のレビューで訴訟手続停止が支持されたケース
Federal Circuitは、VIRTUALAGILITY INC. v. SALESFORCE.COM, INC. (Appeal No. 14-1232) において、対象となるビジネスメソッド (CBM) 特許のための暫定プログラムに従って付与後レビューが終了するまで訴訟手続停止を求める申立てを却下した地裁の決定を覆した。
SalesForce社は、VirtualAgility (以下「VA」) から提訴されてから4ヶ月後にCBMレビューを求める請願を堤出していた。SalesForce社はその直後に、米国改正特許法 (AIA) 18条(b)(1) に従い、特許審判上訴部の審決が出るまで訴訟手続停止を求める申立てを地裁に堤出した。VAはCBMの請願に異議を申し立てるとともに、自社の特許クレームについて無効判断が下された場合にそのクレームを補正する許可を求める申立てを堤出した。6ヶ月後、PTABはSalesForce社の請願を認めた。PTABの審決が出てから2ヶ月後に、地裁は被告の訴訟手続停止を求める申立てを却下した。被告はAIA18条(b)(2)に従って上訴した。
AIA18条(b)(1)は地裁に対し、訴訟手続停止を認めるか否かを判断する際に、(A) 停止またはその拒絶により、問題の争点が整理され裁判が合理化されるか、(B) ディスカバリーが完了しているか、また、裁判日が設定されているか、(C) 停止またはその拒絶により、被申立当事者が不当に不利益を与えることになるか、または申立当事者を明らかに戦術上有利にすることになるか、(D) 停止またはその拒絶により、双方の当事者と裁判所にとって訴訟の負担が軽減されるか、という4つの要因を考慮するよう指示している。
Federal Circuitは、適切なレビュー基準についての判断は下さず、訴訟手続停止を求める申立てを地裁が拒絶したことは、裁量権濫用基準に基づいても誤りであったと判断した。Federal Circuitは、権利主張されている特許のクレームが「どちらかといえば無効である可能性が高い」というPTABの審決の実体を地裁が適切に考慮しなかったと判定した。Federal Circuitは、PTABの審決が分析から除外されると、PTABによるクレーム無効判断により訴訟全体が決着し、争点が一挙に単純化されることになるため、要因 (A) と (D) によって訴訟手続停止を認めることが強力に支持されると判定した。Federal Circuitは、VAがクレーム補正許可を求める申立てを堤出しているという事実によって、不要なクレーム解釈を避けるために訴訟手続停止を認めるべきであるという方向にさらに傾くと考えた。Federal Circuitはさらに、訴訟手続停止を求める申立てが堤出された当時にこの事件が訴訟の早期段階にあったことから、要因 (B) によっても訴訟手続停止が強力に支持されると判定した。要因 (C) に関しては、Federal Circuitは、VAが提訴を1年遅らせたことと仮差止命令を求めなかったことが、訴訟手続停止によって不当に不利になるというVAの主張にとって不利に働くと判定した。
Newman判事は反対意見を述べ、地裁は訴訟手続停止の是非を4つの要因からなる基準に照らして判断する際に裁量権を濫用してはいないと主張した。同判事は、付与後レビューがPTOに請求されている場合には、訴訟手続停止を権利問題として扱うことはできないと述べた。Newman判事は、多数派は、付与後レビューの審理が継続している場合に自動的に訴訟手続停止を認める規則を事実上創り出したことになると主張した。
Alice判決で適用された101条基準で特許無効となったケース
Federal Circuitは、DIGITECH IMAGE TECHNOLOGIES v. ELECTRONICS FOR IMAGING, INC. (Appeal No. 13-1600) は、特許法101条に基づき特許適格な主題を欠くために特許を無効とする略式判決を支持した
Digitech社の特許は、「デバイスプロファイル」と「デバイスプロファイルを改善する方法」に関するものであった。デジタル写真を撮影する際、撮影装置が撮影したシーンの色特性や空間的特性を歪めてしまうことがある。デバイスプロファイルとは、この歪みを補正するために入力装置と出力装置の双方で適用される色特性を記述したものである。Digitech社は、「デバイスプロファイル」のクレーム及び「デバイスプロファイル」の作成方法を侵害しているとして、被告を提訴した。地裁は、主張されているクレームの主題が特許法101条に照らして特許不適格であると判断した後、特許無効の略式判決を認めた。
Federal Circuitもこの判決を支持した。Federal Circuitは、「デバイスプロファイル」のクレームは、物理的または有形の形態をもたない主題に関するものであるため、無効であると判断した。さらに、「デバイスプロファイル」のクレームはむしろ、装置に依存する変換を記述した「データ」を構成しているに過ぎないという見解を示した。Federal Circuitはこれについて、「触知できず実体をもたないデータは、如何なる (特許分類内の) 特許適格な主題にも該当しない、単なる情報に過ぎない」と述べている。Federal Circuitは、最高裁のAlice Corp v. CLS Bank International, 573 U.S. ___, No. 13-298 (June 19, 2014) 判決を引用し、特許されている方法は「情報を整理するプロセスを数学的相関を用いて記述しており、具体的な構造または機会とは結び付けられていないため」この方法がクレームしているのは抽象概念であると判定した。Federal Circuitは、「限定を追加しなくては、さらに情報を生成するために既存の情報を操作するために数学的アルゴリズムを使用するプロセスは特許適格でない」と判断した。
再審査の結果を踏まえて差止命令が無効とされたケース
Federal Circuitは、EPLUS, INC. v. LAWSON SOFTWARE, INC. (Appeal No. 13-1506) において、差止命令と裁判所侮辱制裁命令が再審査で取り消されたクレームに基づいていたため、双方を無効とした。
Federal Circuitは、主張されているクレームの無効と侵害に関して下した判断を踏まえて、本案的差止命令を修正させるために本件を地裁に差戻していた。差戻し審において、地裁は差止命令を修正し、Lawson社が差止命令に違反していることで民事的裁判所侮辱を犯していると判断した。Lawson社は差止命令と裁判所侮辱制裁命令を不服として再び上訴した。
Federal Circuitは差止命令を無効とした。主張されていたクレームが再審査で取り消された結果、そのクレームによって以前与えられていた権利が存在しなくなったことから、Lawson社の行為を差し止める法的根拠を見出さなかったためである。Federal Circuitは、民事的裁判所侮辱制裁命令については、その根拠である差止命令が上訴で覆されている場合、この制裁は破棄しなければならないと判断した。Federal Circuitは、以前に「特許が取り消された場合、『取り消されたクレームは当初から無効であった』ことになるため、非終局的判決は破棄されなければならない」という判断を下していると述べた。Federal Circuitは、当該の差止命令は地裁がLawson社に民事的裁判所侮辱制裁を科した当時には終局的判断とはみなされていなかったと説明し、地裁の侮辱制裁命令を無効とした。
Judge O’Malley判事は、反対意見において、終局性について多数派に異論を唱え、多数派は一審の民事裁判所侮辱判断を不服としてLawson社が行った上訴の実体を考慮すべきであったと主張した。