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Federal Circuit Review | April 2014 (Japanese)

Federal Circuitは、STONEEAGLE SERVICES, INC. v. GILLMAN Appeal No. 13-1248) において、確認判決を取り消し、事物管轄権の欠如を理由に却下せよという指示とともに事件を地裁に差し戻した。

StoneEagleGillmanは、StoneEagleの自動車電子決済システムを医療費請求の処理に利用できるよう改変するため協力関係にあった。StoneEagleは当該の医療費請求システムに関する特許を出願し、出願書にはStoneEagleの所有者を単独発明者として記載した。紛争中、Gillmanはこの特許が「自分の特許」であり自分が「出願を執筆した」と主張しており、これはGillmanが特許出願書の作成を手伝ったことを指しているらしい。StoneEagleは、同社の所有者が単独発明者であり特許の所有者であるという確認判決を求める訴訟を提起し、営業秘密の横領に関する州法に基づき仮差止命令を請求した。地裁は仮差止命令を発した。その後、StoneEagleGillmanが仮差止命令に違反したと主張し、裁判所侮辱の認定を求める申立てを行った。地裁は、この裁判所侮辱の認定を求める申立てを却下し、仮差止命令を変更した。Gillmanは地裁の釈明命令を不服として上訴した。

Federal Circuitは、特許の所有権者の判定は州法によって扱われるべき問題であるため、連邦問題は生じないという見解を示した。発明者適格の問題は連邦問題であるが、Federal Circuitは、確認判決法と憲法第3条が司法権発動の要件としている現実の争訟に基づく事件をStoneEagleが申し立てていなかったと判断した。StoneEagleは、Gillmanが特許を発明したと主張したのではなく、特許出願を「執筆した」あるいは「書いた」と主張したと申し立てただけであった。 よって、Federal Circuitは、地裁には確認判決請求に対する事物管轄権がなかったと認定し、地裁判決を取り消して却下の指示とともに事件を差し戻した。


Federal Circuitは、VEDERI, LLC v. GOOGLE, INC. (Appeal No. 13-1057) において、地裁のクレーム解釈と非侵害認定を覆し、再審理させるために事件を地裁に差し戻した。

Vederiは、Googleのストリートビューが、車載カメラで撮影した画像の組み合わせによる合成画像の作成に関する複数の特許を侵害していると申し立てた。権利主張されているクレームはいずれも「地理的領域内の物体の像を捉えた画像であって、前記の像が前記地理的領域の前記物体の実質的立面像 (substantially elevations) である」ことを要求している。Googleは、このクレーム文言は「正面像または側面像を捉えた垂直平面像 (湾曲像または球面像ではなく) と解釈されるべきであり、ストリートビューは平面ではなく湾曲画像または球面画像を合成した「球面投影像」を生成するものであるため、侵害は犯していないと主張した。Vederiは、このクレーム文言が、湾曲画像と平面画像の双方を広義に含む「正面像または側面像」を意味していると主張した。Vederiは、明細書中にあった、複数のカメラを用いて360度のパノラマ画像を生成する方法および魚眼レンズを使用した画像撮影方法に関する開示を引用した。地裁は、問題の特許は「湾曲像については一切開示」していなかったと指摘してGoogleのクレーム解釈を採用し、これを根拠として非侵害の略式判決を出した。Vederiはこれを不服として上訴した。

改めて新規のクレーム解釈を行ったFederal Circuitは、地裁の裁定は「実質的立面像」というクレーム文言の意味を解釈するために主に建築百科事典に依拠していたという見解を述べた。この百科事典は外部証拠であり、内部証拠よりも低い重み付けがなされるべきであった。本件においては、クレーム文言、明細書、そして審査経過のどれもがVederiの解釈を裏付けている。Federal Circuitは、Googleの解釈に基づいて「実質的」という文言がクレームから事実上外されて読まれ、明細書に記載されていた魚眼レンズを用いた実施態様を除外することになったと認定した。Federal Circuitはさらに、明細書には「垂直平面画像」の使用を好ましい実施態様の一例としてのみ記述されていたと指摘した。審査経過に基づくGoogleの主張を退けるにあたって、Federal Circuitは関連する先行技術について検討し、クレーム文言を「非空撮像」から「実質的立面像」に補正したことによってVederiが提案した解釈によって包含される主題を放棄したことにはならなかった、と指摘した。

Federal Circuitは、地裁のクレーム解釈を覆し、上訴審での侵害に関する主張の検討を求めたVederiの請求を拒絶し、非侵害判決を取り消して事件を地裁に差し戻した。


Federal Circuitは、ANCORA TECHNOLOGIES, INC. v. APPLE, INC. (Appeal No. 13-1378) において、地裁のクレーム解釈と非侵害の略式判決を覆す一方で、2つの文言が不確定的ではないという地裁の結論は支持した。

Ancoraは、ソフトウェア「プログラム」が適切にライセンスされているかどうかを検証する方法を侵害しているとしてAppleを提訴していた。地裁は、「プログラム」という文言が、アプリケーションプログラム、すなわちオペレーティングシステム自体ではなく実行するためにオペレーティングシステムを必要とするプログラムに限定されると解釈した。この解釈に基づけば、Ancoraの特許はオペレーティングシステムのライセンスではなくアプリケーションのライセンスを検証する方法のみを対象としていることになる。Ancoraはこのクレーム解釈に基づいた非侵害の略式判決に合意し、Federal Circuitに上訴した。

Federal Circuitは、問題の明細書においても審査経過においても、コンピューター関連の文脈における「プログラム」の通常の意味を排除するのに十分な要素が認められなかったため、地裁のクレーム解釈を覆した。コンピュータープログラムとは通常、アプリケーションプログラムだけでなく、コンピューターが実行するための命令セットを含むと理解される。Appleは、「プログラム」という文言が確かにアプリケーションを指している例を明細書中で挙げていたが、この明細書にはこれらの例が明らかに非限定的なものとして記述されていたため、Federal Circuitはこの証拠を拒絶した。Federal Circuitはまた、Appleが審査経過で提示した例ではクレームされている方法を実行するソフトウェアをアプリケーションとして実際に記述していたことから、どのようなソフトウェアに対して作用しクレームされている方法によって検証することが可能かということに関係する場合の「プログラム」という文言の適切な解釈には何ら影響しなかったと判断した。

Appleは、「揮発性 (volatile)」および「非揮発性 (non-volatile)」という文言は不確定的ではないとした地裁判断を不服として交差上訴した。これらの文言にはコンピューター分野で明確かつ定着した意味があるにもかかわらず、Appleはなおも、問題の明細書中の「揮発性」および「非揮発性」の用例がこの2つの文言の通常の意味と調和していないと主張した。Federal Circuitは、Appleが指摘した限られた表面的不一致はこの2つの文言の平易な意味を排除するのに十分でないと判断した。さらに、Federal Circuitは、審査経過において審査官が「揮発性」と「非揮発性」の通常の意味が適用されることを特許権者に対して明示しており、特許権者が一度もこれに対して異議を申し立てていないことを指摘した。